ファウストVol.4

ドラクエ熱が落ち着いてきたので、ファウストVol.4をやっと読んだ。発売前から、メルマガで煽りに煽っていた文芸合宿についての感想などアレコレと。

  • 子供は遠くに行った / 乙一
    • 小説全体が娘から母への不可解な手紙である、という点以外には目に付くところはなかった。これについてのネットでの感想を見てみると、乙一らしくて良い作品だという評価の多いこと多いこと。おれは乙一の小説をいままで読んだ事はなかったのだが、これが乙一らしいと言うのならば、これからもきっと読まないだろう。
  • こころの最後の距離 / 北山猛邦
    • 1番最初に読んだ11章が、『Reverse』してきて2回目に読んだ時にはオチとして機能しているのは面白い。ただ、この『Reverse』という仕掛けへの感動こそあるが、シナリオ自体には魅力を感じられなかったのが残念だった。
  • 地獄の島の女王 / 佐藤友哉
    • この話、大っ嫌い。おれにはまったく合わない。佐藤友哉は人生・相談だけしてやがれーー。
  • 新世紀レッド手ぬぐいマフラー / 滝本竜彦
    • 彼らは、神田川を再現する演技をしようとする人間の演技をしてるはず。志奈子の性格の急な変容を見るにつけ、彼女には彼女自身の人格は存在せず、すべて演技だと。どういう人物を演じるかを決定する人格もまた志奈子が演じている人格であり、その人格もまた・・・みたいな循環構造を感じた。いやまあ、読んだ時はほんわかハッピーエンドで普通に感動したんだけど、なんとなく上のようなことを書きたくなった。
  • 携帯リスナー / 西尾維新
    • 主人公がヒネクレてない男の子だという時点で、西尾維新っぽさはあんまり感じないんだけど、共感できる部分はある小説だった。その昔、おれはラジオっ子だったから、雑音リスナーという懐かしい響きの言葉さえも、この身をもって体験していた。ラジオはいい。いい。

全体的な感想としては、西尾と滝本の小説は、たった4日でこれほどのものを書いたのかよ、すげえなーという感じ。北山と乙一のは、へぇー、4日で書いたのに結構面白いなあという感じ。そして佐藤のが、まったくおれには合わない、むしろ一般的に見てもつまらないのではないのかという感じ。
さて次はリレー小説。

  • 誰にも続かない
    • リレー小説っていうものを始めて読んだけど、前の人が伏線を張って、後ろの人が消化するっていう構図は面白いね。前の人の雰囲気と設定を崩さないようにしつつ、自分の色を出していく、と。ただ、西尾維新自身が言っているように、最後の人は伏線を消化するしかなくてかわいそうだとも思った。特に今回のような短い小説ではなおさら。あと、次回リレーをやることがあったら、「なんだその腰から生えているものは!」的なものも読んでみたい。

合宿のタイムテーブルを見てみると、西尾維新の速さが恐ろしいほどだ。西尾モンスター維新。小説書いてるのがたった9時間だけって、むしろ観光がメインになってるよなあ。
講評会は、参加者たちがお互いの作品の感想などを言い合っていて面白かったんだけど、ただ東浩紀がいらない。全然いらない。ファウストという内輪褒め雑誌の合宿に、批評家を連れて行くなんて意味が皆無。批評家は無闇に褒めたりしないから、おれのように、甘ーい褒め合いを期待する読者としては面白くない。うがった見方してぐだぐだ講評してんじゃねーよ。「上京というテーマを使いきれてない」とか言ってんじゃねーよ。そのテーマの枠内で面白い小説を書くことが目的なのであって、そのテーマを深く掘り下げる必要なんてないだろ。そもそも、四日間の合宿を生き抜いた戦士たちと、出来あがった小説を読んだだけの傍観者が講評会をやるなんてのが間違いだ。噛みあうわけがない。
あと、ファウストを読むといつも無性に小説を書きたくなる。いままでに小説を書いた事なんて一度もないんだけど、ファウストはそういうROMたちにも小説を書いてみたくさせるような不思議なパワーを持っている。