ひぐらしのなく頃にと僕

川のシーンになると流れるタプコポタプコポというBGMが、陸から聞いた川の流れの音にはどうしても聞こえず、水中から聴いた水の音に聞こえて仕方ない。僕はその音を聞いていると、母の胎内にいたころを思い出す。あの羊水の海で過ごした日々。今でもありありと思い浮かべられる。
 
大人になってもいまだにカナヅチの僕が、基本的人権すら持たない肉塊だった頃に泳げたわけもなく、羊水の海の中で目を覚ました僕は、すぐさま溺れた。息が出来ないことのあまりの苦しさに、僕はそこらじゅうの壁を蹴りまくって必死で苦しさを伝えたのだが、両親は「赤ちゃんがお腹を蹴ったわーうふふふー」などと言って感動するばかりで、僕の苦しみに理解を示そうとしなかった。
しばらくして、蹴っても助けは来ないのだと悟った僕は、十月十日の間、息を止めてひたすら耐え続けた。
始めに目を覚めしてから312日後、僕は母の胎からスポンっと生まれ落ちた。看護師の腕に抱えられた僕は、肺いっぱいに初めての空気を吸いこんで、大声でわんわんと泣いた。僕としては、一年近くにも及んだ虐待の苦しさで泣いていたのだが、そんな僕を見た周りの大人たちは、「あ、赤ちゃんが泣いたーうふふふー」と心底嬉しそうに笑いだした。僕は恐怖で震えた。泣き声は止んでいた。
苦しみの海からやっとの思いで抜け出した僕は、人間界という苦海に生まれ落ちたらしい。
 
なんの話だったっけ。ひぐらしか。まあそれはおいおい。