フェルマーの最終定理

難解な数学を扱っている本なのに、ページをめくる手を止めずにすらすら読み解いていける平易さ(とおもしろさ)に驚愕。
きっと、古代ギリシャの時代から現代までのフェルマーの最終定理に関わった人間についてのドキュメントという側面が大きいからだろうなあ。数学上の理論や概念は、それほど難解でないものは例え話(貫通型オナホールほしふるうでわは、ひとつの穴が開いているという点で位相幾何学的には同じ物なのです、など)を駆使して数字を用いずに説明し、難解なものは説明しないというスタンスを取っている。
だから、フェルマーの最終定理およびその周辺について厳密に理解したい数学者には向かない本だと思えるが、まったくの偶然にも(おお、神の思し召しに感謝します!)、この世界には数学者よりも数学者でない人の方が圧倒的に多い(数学者<<非数学者)ので、数学者はガン無視できる。そして、圧倒的大多数に所属しているおれは、おもしろい小説の題材がフェルマーの最終定理だったというような印象で、とても楽しく読んだ。
ピタゴラスの定理からフェルマーの書き込みを経てワイルズの閃きに至るまで、ドラマチックな出来事と愛すべき人物たちがひっきりなしに登場するので、「数論っておもしろそう」とかなり思える内容になっていて、もしも高校生のときに読んでいたなら、大学では数論をやりたいと思っていても不思議ではなかったと思った。これを読んでいると、難解でなくてただ楽しそうに思える。実際に、高校の数学教師がこの本とこの本の元になったBBCの番組を紹介してくれたときに抱いた興味と関心は、この本を読むに足るものだったような、そんな、ポワーンとした回想シーン。

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)