ブラッドジャケット

超おもしろかっこよかった。
前作ブラックロッドは、独特の造語などに彩られた玉石混交の世界で吸血鬼たちが大暴れするという熱気ムンムンな快楽ストーリーだった印象だが、これは、もちろん前作と同じ作品世界内ではありながらも、世界の描写や造語は主張が強すぎない程度に削られて、前作で薄く感じたストーリーにも、気の優しい青年が女の子に出会ったりして強さに目覚めていく青春ボーイミーツガールという軸ができているので、追うべきラインがしっかりしていて読みやすい。前作がおれに取って理想的な方向に進化した感じで、とてもありがたかった。おもしろすぎるぜこれは。
ギミックのおもしろさのみを個人的には強く感じたブラックロッドはともかくとしても、これは出版された瞬間に人気沸騰しただろうという気がするが、そうでもないらしいんだよな。不思議だ。まずライトノベルの読みやすさがあって、多くの読者の求めるだろうボーイミーツガールが軸になっていて、セリフも造語もキャラクターもそれぞれが印象的で(特に神父関連は爆笑に次ぐ爆笑)ガンダムジョジョのようにネタとして楽しむ事もできそうで、どう読んでも楽しく思えるんだがなあ。まあ、おれはおまえらじゃないし、十年前の作品でもあるので、嗜好ってのは人や時代でおれが想像も出来ないくらいに異なっているってことなんだろうけどさ。それは考えても仕方ないことだよなー。
とはいえ、この辺の作品群で人気が出ていなかったから、シスマゲドン(読んでないけど)やある日、爆弾がおちてきてなどの萌え傾向の作品を書かざるを得なくなっているのだとすれば、悲しい。萌えが嫌いというのではなくてむしろ好きだが、古橋秀之は、ブラッドジャケットがおもしろすぎることからも、そこに形骸化した萌えを取り入れておもしろくなる作家だとは思わない。

ブラッドジャケット (電撃文庫 (0176))

ブラッドジャケット (電撃文庫 (0176))