因果応報

ルーシー・モノストーンが紛れていても違和感のなさそうな混沌とした雑踏の中で、ウタピカは歌のテーマを探していた。
流れるようにすれ違い続け、そこからひとりの人間を抜き取ることの難しい彼らは、すべて雑踏という舞台の構成要素でしかないように思える。彼らはもはや人間と呼ぶべきですらなく、人間のパントマイムとでも呼ぶべきなのではないのか。ただの自動人形。そう考えると、描くべき人間がいない雑踏を歌にするのは難しいのかもしれない。たしかに、ある面ではそうだろう。人間はいない。しかし、こうも思うのだ。多くの非人間的な活動がひとつのパターンを作るとき、そこには自然的な風景が生まれるのだと。波打つ大海原、木々のざわめき、雲の流れが美しいように、この雑踏もまた自然であると解釈すれば、そこには描かれるべき美しさが宿るはずだ。そうだ。この調和なきパントマイムの全貌を、雄大な自然のありようとして、歌にしよう。話し声、表情、足音、交差する影。人のようで人でないものたちの歌を!
そんな考えを隣を歩く真に話すと、「へへっ、なに言ってるのかわかりませんよウタピカさん!」と即座に答えられた。イラっとした。