かにまこ

ごごっきゅごごっきゅと水をあおってプァアと至福のひと息をつこうにも、うなじのあたりにできものができているので、上を向くと、押しつぶされたできものに鈍い痛みが走るのだった。
「うっ……うー」
水くらいおいしく飲ませてくれと思うが、痛いのは嫌なので俯いている。実は痛くなくても俯いているから変わらない。ともかくそうして俯いていると、目の前のテーブルに置かれたアイドルマスター MASTER SPECIAL 01が目に入る。ゲンキトリッパーやよいの二の腕には相変わらず絆創膏が貼ってある。

敵モンスターの鞭に打たれないで二の腕だけを怪我することはあまりないので、打たれていないことを祈る。この絆創膏の理由についてはtwitterでいろいろ案を頂いたので、そのどれかならいい。ところで、ひと月ぶりの日記だ。昨年末に見たアイドルマスターゼノグラシアの感想を書きたいんだった。ネタバレは辞さない。
操縦者とロボットとが恋愛をする話だった。言葉を喋れない文字も書けないロボット。オセロと写真を撮るしかできないロボット。不自由さが重なる僕が、普通になりたいと望まなくてもあるがままで普通であれる世界。これは居心地もよく、おもしろいアニメだった。
また戦闘がロボット同士の徒手空拳での打ち合いで、ロボット操縦法が操縦席で腕を動かすことだったのも気になった。操作されるロボットにはっきりとした心があって、操縦者とロボットの腕の動きが同期する操縦法なので、二人羽織のように気持ちのつながりに通じる行為だなと思った。うまく戦えるとロボットが嬉しいのだろうなと思える戦闘だった。
人物では雪歩が気になった。最初のほう、五話で春香の暖かい手によって救われるまで、何を考えてるのか全然わからなかったのがよかった。というのも、内気な性格というのは自分の気持ちを表現できないという意味なのだから、見ていて内気だという印象を抱くような描写よりも、何考えてるかわからないと思える方がもっともらしいのではないかと思ったのだ。
そしてそのあとしばらく目立たず、十七、十八話あたり、視聴者にさんざん決別を匂わせた上での雪歩の誕生日兼クリスマスに泣いた。春香が「Dear 雪歩ちゃん お誕生日おめでとう。これからもずっとずっと友達でいようね」とバースデーカードをしたためれば、雪歩は「わたしの はじめての ともだち」と想いながら去っていく。
このエピソードは視聴者いじめと言ってもさしつかえない悲しさだった。「おまえら幸せになってくれようようよう……」と涙ながらに繰り返し祈るしかできなかった。去っていったあとの雪歩はややこしくて言葉には未だなっていない。
そして真打登場! 菊地真ちゃんはゼノグラシアでは蟹を愛玩していて、その様子がかわいかったので、かにまこかにまこ! と興奮した。かにまこという言葉は語呂がいいし、なぜかおいしそうだとも思った。おいしそうというか、かにかまぼこの略称みたいだとすぐに気づいた。