名探偵エヴァンゲリオン 新劇場版:探偵学園Q に続く

はじまったときは「エヴァ!」って思って弐号機が出てきたときは「アスカ!」って思って反射しかしてなかったんだけど、空から降ってくる使徒──序でクリスタルっぽかったやつがラミエルらしい、強いやつがゼルエルらしい、としか戦闘する使徒の名前の記憶がないので、こうして個体の名前を言及したいときに少し困ります。とはいっても、本編で言及されない名前を覚える機会なんてないので、みんないったいどこで覚えてるんだよ! とも思います。使徒の多くには声優がいるわけでもないので、テレビ版のエンディングで「ラミエル:ラミ田エル子」というような表記を見たという覚え方も通用しません。破の冒頭の真希波・マリ・イラストリアスの独り言くらいに終始説明セリフのオンパレードなアニメだったらもっと知識もついたことでしょうが、それではおもしろくなかったかもしれません。ちなみに今書いた眼鏡のひとの名前は、さっきまでいろんな人の感想を読んでいたので覚えました。ファブラ・ノヴァ・クリスタリスみたいな名前だなあと思います。そういえばFF13の主人公も坂本真綾ですね。ということで今、サカモ・トーマ・アーヤリスと思ってみましたが、映画のおもしろさが吹き飛びかねないほどつまらないです──を受け止めるためにエヴァンゲリオン三体が展開するシーン。零号機か初号機──零号機と初号機の区別がついていないので、どちらかを言及したいときに少し困りますが、弐号機だけは真っ赤なので即座にわかります。弐号機が出てきたときは「アスカ」って思った、とさっき書いたので、私が弐号機を識別できることはこうして説明するまでもないと思います。使徒の名前もわからず、零号機と初号機の区別もつかない、そんな私が唯一個体識別できる戦うでかいやつがエヴァンゲリオン弐号機なので、弐号機は特別→パイロットも特別、という因果関係を理由のひとつとして、アスカを好きになるのも無理はありません──が山を飛び越えて街並みに臨んだカット、それに続く、零号機か初号機が電線をハードルのように飛び越えながら走るカット、それに続く、零号機か初号機が地下から競りあがってきたバンクを利用して全速力のまま左折するカットのスピード感で涙が──このあたりから最後までずっと半泣きなのですが、はずかしいし周りに迷惑だし嗚咽はしないようにしようと思いながら、こんなにこらえるくらいなら両サイドの席のチケットもくらい買えばよかったよ、とも思いました。なるほど。しかしそれでは、私が涙を流すために買ったチケットをどこかのだれかが買えずに涙を飲むことになる。うまいこと思った! うまいこと思った! と思ったりしてなんとか気をそらしました──出た。
参号機のテストを買って出たアスカに対し綾波さんがお礼の留守番電話を入れるシーンでの「ありがとう、感謝の言葉」という独白がかわいかった。マスエフェクトにこういうしゃべり方のエルコーという種がいて、ごつごつした肉の巨大な塊としか言いようのない見た目にもかかわらずかわいかったことを思い出す。無表情で「ありがとう」だと私は感謝されていない可能性を疑ってしまうが、「感謝の言葉」とまで明言されると感謝の言葉なのだとわかる。わかることができれば好きになることができる。いままでの綾波さんは意味がわからなかったので好きも嫌いもなかった。
その後、アスカがひどい目にあい始めたときは悲しかったが、今日の日はさようなら効果もあって、安らかな諦観が浮かんできた。居心地がよすぎる。また、文脈や伏線を適切に感じ取れるようになろうとしたことがないので、直前のシーンでミサトさんに心情を吐露するアスカを見ていて、これからアスカには楽しいことがたくさんあるぜーみんなと笑って暮らせるぜーと幸せな気持ちにただただなっていたし、参号機がどんなやつだったかも綺麗に忘れていたので、びっくりもしていた。ああ……ああ……と嗚咽を思い(漏らすと周囲に迷惑)、茫然自失になりながら、一方でインターネットは非情だ! とも思っていた。公開から一ヶ月くらいしてから悠々とエヴァ破を見に行こうと思っていたところを、インターネットで私が読んでいる範囲の人たちが尋常ではないくらいにおもしろがっている様子だったから公開一週後の今日見に来ている、という意識があったからだ。アスカがこんなひどいめにあっているのに無邪気におもしろいおもしろいと言っていた──ネタバレを避けようとは思っていたので、エヴァ破感想エントリが目に入っても本文はまったく読んでいなかったのですが、それでも感想エントリのタイトルやブックマークのつき方、あるいはtwitterのひとこと感想などからおもしろかったという雰囲気だけは感じていました──のかインターネットで私が読んでいる範囲の人たちは! もっと悲しみに満ちた雰囲気になっているべきだろう! なんて非情な! と思っていた。今思えば40〜50分くらいしか経っていないシーンだったんだろうけど、物語の進行具合から判断して、もうそろそろ最後なのではないかという気持ちになっていたのだ。スピード感と密度で時間がわからなかった。このあたり、まだ終わらないでくれ! とも願って見ていた。インターネットが非情だということよりも、ここで終わられてしまっては、Qまでのおよそ二年間、この悲劇に心を囚われることになると感じていたからだ。それはそれで充実していたかもしれないけど、実際にはそこでは終わらなかったので、おもしろかった! と言ってしまえるし、いろんな人の感想も楽しく読めた。
義務でなければ外出もしないような人間だけど、Qが始まるまで毎週見に行きたいなーと思ってるくらい。実際には行かないだろうしそもそもそんなに長く上映していないとは思うけど。
あと、グッズも何か買おうかと思ったけど、ネルフのマークをあしらったものが目に入ると気持ちが萎えてしまった。形のないもの、個々人の心情を見ている感覚が強いアニメなので、主人公たちの所属している組織のアイコンなんて見ても「組織なんて概念はエヴァと関係ないじゃん!」と思ってしまうっすねー。