四畳半神話大系

四畳半神話大系

四畳半神話大系

ことごとく辛くて重い本である。この本を笑い飛ばせるような奴は逝って宜しい。
中学高校と男子校というストイックな環境の中で紳士的な教育を施されてきた、ぼんくら紳士の鑑たる僕にとって、この小説の主人公はもはや感情移入の対象どころではなく、完全に同化したかのような一体感を覚える存在である。醜く育った自意識と自尊心、尊大な文体による思索への耽溺、異性からの孤立、学問の放棄、肉体の衰弱化、エトセトラエトセトラ。
在りえたかもしれないと夢想する薔薇色のキャンパスライフなどはどこにも存在せず、どこでどのような選択をしたところで結局おまえに待っているのは鬱屈したキャンパスライフなのだ、さあ落ち込むのだ、社会不適合者よ! というメッセージが読み進めていくうちに感じられてきたので、そこで僕はへなへなと落ち込み始めたのだが、最後はそれなりに前向きなエンドを迎えたので、これはきっと最終話の選択こそが正解であり、より良いキャンパスライフに続く道なのだ。世界は完全にパラレルワールド単一エンドではないのであり、また現実世界にあっても、薔薇色とまではいかないまでも今より少しは良いライフに繋がる選択はきっとあるのだ。どこかのパラレルワールドにはおれより幸せなおれがいると希望を持ちたいではないですか。あらゆるおれが鬱屈しているなんて酷いではないですか。無意味で楽しいだけの毎日ではやっぱり不満ではないですか。ねえ。
大学生の、というか大学三回生の今この本を読めたことは実に絶妙なタイミングであった。今でなければこれほどは心に響かなかったであろう。太陽の塔も読まねば。
あ、あと、第三話のくっつき方はいいなあと思いました。