みなさん、まず用語解説を読んでから本編を読みましょう。ディアスポラからのお願い、だよ(はぁと

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)

ディアスポラ。いろんなとこで言われてる通り、かなり難解な小説なので、すべての文を2、3度ずつ読み返してゆっくりと理解しながら40ページくらいまで読んだ。40ページの時点ですでに書かれている内容は超絶アルティメット面白フィーバーなんだけど、一方で投げ出してしまう人が多そうだなあというか、こんなもんは人気になるような小説じゃねえと思った。こんなもんが人気なようじゃあ、敷居が高すぎて誰もSF界になんて足を踏み入れなくなっちゃうよ。ということで、おれはおもしろいおもしろいというけれど、まったく薦めはしないよ。わかんねー! って思いっきり叫びたい人は買うがいいさ。まあいいや。40ページ分の感想というかあらすじを書く。書くという行為を経て解釈しようという作戦だ。内容が濃すぎて全部読み終わってからまとめて感想は無理だから、たぶん。
40ページまででは、仮想空間のなかで、<創出>というプログラムによって人間レベルの知性を持った意識が一から作りだされ、育っていく過程が淡々と描かれている。整然としたデータの波が虚無に放たれ、そこに数億もの別のデータの波が複雑に重ねあわせされていき、その合成波はいつしか脳の皺のように複雑な模様を作り、知性の赤子が顔を出す。おぎゃおぎゃあ。バブーバブー。ハーイハーイ。イクラちゃん!! その知性はデータベースにアクセスしたり人と会ったり(仮想空間でね)するなかで、さも人間の脳がニューロン同士を結合するように、得た知識を関連付けていく。例えば、初めはイクラちゃんの絵とイクラちゃんという名前を関連づけるだけだったのが、タイコさんやノリスケさんとの関連、ハーイハーイしか喋れないという設定への関連などを覚えていく。そして彼は、イクラちゃんの絵を見るだけで、イクラちゃんという名前だけではなく、ハーイハーイしか喋れないという設定やタイコさんのことなども同時に想起するようになった。すなわち、予想だ。そんな感じで、今のところ彼は人間で言うと2才くらいの感じに成長した。イクラちゃんくらいだろうか。名前はまだない。自分という存在を意識しはじめた。実にイーガン。