ファウスト Vol.6 SIDE-A


ファウスト Vol.6 SIDE―A


ファウスト Vol.6 SIDE―A

ついにすべて読んだ。

  • 憂い男、愛らしき目もと口は緑、レディ
    • ナイン・ストーリーズはうろ覚えで、佐藤友哉は子供たち三回怒るくらいしか読んでなくてよく解かってないので、どの部分が佐藤友哉でどの部分がサリンジャーなのかと、ずっとうろ覚えの記憶と照らし合わせながら読んでいた。ナイン・ストーリーズを明晰に覚えているか、佐藤友哉らしさがわかるくらい佐藤友哉を読んでいるか、あるいはどっちもぜんぜん読んでないかだったらいいのかもしれないけど、あいにくおれはどっちも中途半端に読んでいたので、変に気になってしょうがなかった。読んでいておもしろくても、でもこれは佐藤友哉ではなくてサリンジャーがおもしろいのではないか、と疑心暗鬼になってしまう。ナイン・ストーリーズを読み返すのが理想だよなあと思うけど、ある小説を読むためにほかの小説を読むというのも面倒な話だ。
    • おれにはわからないんだけど、実際はどのくらいのオマージュ具合なんだろうか。鏡家っていう既存のキャラクターや世界観を使いながら短編自体がオマージュっていうのはどうも腑に落ちない(そうだとすると、キャラクターや世界観がただの作者の駒にしか読めなくなって魅力がなくなる)ので、ガジェットにナイン・ストーリーズオマージュを突っ込んでるだけってことだと納得がいく。笑い男という短編がオマージュなんじゃなくて、秋雄さんがサリンジャー大好きっ子という設定なだけ、とかね。どうなんだろうか。
  • すずめばちがサヨナラをいうとき
    • いままでずっとうえとおのって打鍵してきたけど、これを機にかどので辞書登録したくらいおもしろかった。ベストオブファウスト6Aだ。上遠野浩平にはマンネリズムを覚えていたけど、ファウスト5号のふたつ、ビート4、すずめばちと立て続けに傑作。そんなに上遠野浩平が変わっているとも思えないので、たぶん、小説界が五年周期なんだろう。90年代後半は上遠野浩平がおもしろく、ゼロ年代前半はそうではなく、ゼロ年代後半はまたおもしろいんだきっと。上遠野チルドレンの西尾維新とは位相が180度ズレてるんだきっと。
  • 窓に吹く風
    • てっきり梢からメールが来てるのかと思った。じゃあなんで同期してたんだあのメールは。あと、小畑健はおずおずと上目使いをする少女を描くのがうまいね。きゃわいい。
  • 怪談と踊ろう、そしてあなたは怪談で踊る

あはははは! あはははは! あははははははは! っていう笑い声の表記がすごい多くて、魔法少女ゲシュタルトたんが崩壊寸前になったけど、主人公がお骨サマの呪いを作って、それが徐々に広まって一人歩きしていく様はいい感じに狂ってておもしろかった。カナカナゼミのコロニーやってみたくなってきた。

数日前

人気のあるクビツリ女子がでてきてよかったね、みたいな冷めた気持ちで読んでたら、西条玉藻がかわいくてびっくりした。冷めてたところから急に暖まったせいでガラスの心がひび割れた。ファン向けキャラ萌え小説で好きなキャラを見っけられたおれは幸せものだぜふははは(中略)過去の話だから主要なやつは誰も死なないのが確定してるのかあ、とか、戦ってばっかりだなあ、とか、アスとレンはどっちがどっちだかわからないなあ、とか、ネガティブな感想が林立するなかで、たったひとつ芽生えた、西条玉藻がかわいいというこのポジティブな気持ちを大切にしたいと思った。そんなところで了。

数日前

総括すると、月末にはもうSIDE-Bかよ。