断章のグリムI 灰かぶり

物語から個性を取り除くと原型だけが残り、物語の原型に近いものとして神話や童話がある。したがって、おっそろしい悪夢が、神の意識の深層から浮かび上がるにともなって劣化し、最後に残った悪夢の原型だけが現実にあらわれて事件が起こると、それはまるで世界が童話の見立てを行っているかのように見える、というこの設定。ワンダー。
それに加えてヒロインがゴスロリなので、おれっちはForestを頭の片隅に思い浮かべつつわくわくしながら読んだんだけど、そういう話ではなかった。物語の原型を持ち出してはいるけど、創作行為自体をネタにするというわけではなくて、学園を舞台に女の子が特殊な能力を使って戦う話だった。ワンダーな設定は超常的な能力を得る理由としてのみ作用していた。
あと、シリーズ化が前提となっているためか、一巻だけを見ると不要な設定やキャラが多くて消化不良気味だった。シリーズを全部読めばいいと言えばそれまでだけど、世界観がワンダーなんて感想を持てるのは一巻のときだけだろうし、一巻で完結していてプロットもワンダーだったらよかった。
まあ、不満な部分はすべてライトノベルの売り方としては真っ当なものなのだという気もするので、電撃文庫から出ている以上は仕方ないのかとも思えるけど、そんなことは知った事ではないので、おれにとって楽しいか否かという当たり前の視点での感想をひとことで表せば、勿体ねえ。