グレー・レンズマン

アリシアに赴いて一連の精密な検査を受けてレンズを授けられるという経緯は、メガネ屋に赴いて一連の精密な検査を受けてメガネを受け取るという経緯に類似しており、レンズマンを好くものはメガネをも讃えるべきです。さらに、レンズは精神感応力に密接に関わっているので、視力を増強させる現実のメガネと対応させて、レンズは心のメガネであるとイメージするのが相応しいでしょう。なんてメガネ的なんでしょう。
おもしろかった。爺さんたちや看護婦長のユーモア溢れるかけあいも、キニスンの八面六臂のスーパーヒーローっぷりも、惑星をぶっ飛ばしたり超強力なビームを放ったり超強力な防御スクリーンをで防いだりすんのもとても豪胆で楽しい。七十年前に書かれているものなので、ガジェットや論理からはあまりハードな印象は受けないが、それが逆にいいのかもしれない。いやそんなことはない。七十年前に人気があったからこそ今も残っているのだし、今も昔もおもしろいスペオペだ。
これはきっと七十年前にしか書けなかったんだろうな。その時代ごとの科学を踏まえた最先端の未来像を提供するSFは、科学が進む限りは常にその時代にしか書けない新しいものを提供してくれるはずだから、過去にも未来にも書けない。ネタがループしない。ハードSFのネタが今さら蒸気機関になったりはしない。まあループするから詰まらないということはないけど、ループしないというイメージはとても魅力的だ。
あと、残り20ページくらいになった段階で、「どう考えても終わらんぞこれは。このままでは次巻に持ち越しだ。早くやっつけちまえ」と思ってちょっとハラハラしたが、一瞬で大胆にやっつけた。

グレー・レンズマン―レンズマン・シリーズ〈2〉 (創元SF文庫)

グレー・レンズマン―レンズマン・シリーズ〈2〉 (創元SF文庫)