新学期

俺はひまわり組のころ、毎日ちゃんと幼稚園に通っていた。でもあじさい組の時ヒッキーになった。三年間、俺は外出をしなかった。部屋にずっといた。早朝にハンバーグを食ってケロロ軍曹を観て流星のロックマンをして、眠くなったら寝た。親は俺がすぐ泣き喚くから手に負えなかったらしい。とうとう親は最後の手段として俺を病院に連れて行こうとした。俺は大声を上げて抵抗した。しかし親は決して諦めず、俺を家から引きずり出した。俺はなんとか親の手を振り解いて、走って逃げた。三年ものあいだ引き篭もっていたから、数十メートルほど走っただけで息は切れ、脇腹が痛くなった。人目を避けてふらふらと歩き続けていたら、いつしか俺が生まれた病院に着いていた。待合室では小学生が顔いっぱいに期待を浮かべて母を待っていた。俺はそれを眺めていた。そしてあることに気づいた。この小学生は俺の同級生だ。俺はまた逃げた。いてもたってもいられず走った。走り続けた。近所には新しいおもちゃ屋が増えていた。よくよく周りを見渡せば知らない建物が増えた。ふと水溜りをのぞき込むと、髪が肩までのび、洟を垂らした浮浪児が映っていた。気が狂いそうになった。また逃げるように走った。その日は一晩中ずっと走った。早朝、自分の家に帰ったら、親は寝ずに待っていてくれた。それからというもの、俺は毎日走り続けている。体力も元に戻った。体型も元通りになった。髪もすっきり切った。親には今までのことを謝って、今日からついに小学校に通うことになった。いままで何もしてこなかった分、頑張らないといけないから大変だけど、毎日がとても充実してる。週一だけどそろばんも始めた。余裕が出てきたら習字も始めようと思う。