真の髪について

生活というポーズを取りながらもその内実は真のことを考えていて、特に彼女の「ボク」という自称のほかのもうひとつ目に見えた特徴、いわゆるアホ毛について思いを馳せていました。アホ毛とは、髪の流れから一、二束だけ飛び出している毛の俗称です。
もしも真のアホ毛が、つむじから10センチくらいの毛がプレーリードッグのように顔を出しているものだったなら、ただのかわいい無造作ヘアーなのでここで特筆することもなくニヤけるのみだったでしょうし、長い毛が頭頂部あたりから垂直に20センチ伸びたうえで直角に後ろに折れ曲がっているものなら、洗濯糊で固めるなんてロックだねと髪型にのみフォーカスを当てた感想を抱くに留まり、真の内面に踏み込めはしなかったでしょう。
しかし実際の真のアホ毛は、こういったファッション的にデザインされた髪型ではなく、一点で固定された弾力性のある細長い物体が直交する一方向への力によって歪められたような、自然に存在しうる形をしています。それはカジキマグロとファイトしている竿の形であり、矢を射る直前の引き絞られた弓の形であり、前から吹き付ける風の力と毛根の張力との釣り合いによって三日月型になった前髪そのものです。
そう、風です。真の髪型は頭部前方からの風を暗示しているんです。事務所やスタジオの中にいてさえ。

風が吹かないそんな場所でも僕たちが走るなら感じることができる

という326の言葉が思い出されます。きっと、真はいつも一所懸命に走っているのではないでしょうか。もちろんいつも身体を走らせているわけはありませんから、これは、真がトップアイドルという目標に向かって一心に前進することのメタファーとしての疾走。精神の疾走です。そしてその疾走によって感じる風もまた、真がトップアイドルになるために乗り越えなければならない壁、試練、抵抗のメタファーとなっているのです。
ですから、髪が立ってさえいれば、真が抵抗を受けながらもがんばって前へ進んでいるのだと信じられるのです。
そしてこうやってアホ毛→風→疾走と連想を繰り返し、真の内奥でたどり着いたがんばり屋さんという性格、これこそがきっと、第一印象のままではありますが、真の本質なのだろうなと思いました。
あと、がんばりすぎてあまりに速く走ってしまうと、常にフランク・フレデリクスのように頬がぷるぷる揺れるアイドルになります。