skate.と老婆

広い街を自由に動き回れるけど、スケートボードからは一切降りられないという思い切ったデザインのゲームなので、トニーホークみたいに乗り降り自由で歩ける方が現実らしいよねーとも言えるんだけど、そんなことは「足なんて飾りです」と一笑に付し*1、むしろ、常にボードに乗りっぱなしを強制されることで弥が上にも見えてくる、スケーター的世界観ってのにとっぷり浸ってしまうのが楽しいゲームだわ。
浸かった結果感じたことと言えば、「街は俺の庭だ」と道路を走りガードレールを滑り、ところかまわず滑走し、「法律なんて知ったことじゃない」と不法侵入をし、衝突事故を繰り返す。そんなふうに、スケーター世界観はほぼ無法さと爽快さとでできているということ、そして、歩道と車道を隔てる7、8センチの段差の凶悪さと、老婆を轢いたときの罪悪感だけは、異彩を放って嫌な感じだということ。
まず段差は、距離感がつかめないほどの高さしかないので避けにくく、かといってボードの車輪にとっては危機的な段差なので、一度引っかけてしまえばボードはそこでぴたりと静止し、スケーターの体は回転モーメントと慣性を一身に受けて前方に回転しながらダイブ。荒い路面に顔面からズザザー! となる。スケーターを転ばすために存在してるとしか思えない凶悪さなので、声を大にしてバリアフリーを訴えたくなる。っていう、これはまあ想像できるスケーター世界観。
だけどもうひとつ、老婆だけは轢くべきではないという良心の存在は実際にやってみないとわからなかったなー。若者は轢いてもすぐキビキビと動くのでおもしろいだけで済むんだけど、老婆は、ドサっと死んだように倒れ、十秒ほど静止し、いよいよ死の気配をうかがわせたのちに、生まれたての子鹿のようにピクピクしながら起き上がり、ゾンビのようにフラフラと歩きだすから、この一連の輪廻的なルーチンには本当に申し訳ない気分になってくるのよね。あらゆる犯罪的所業も楽しいなーだけで済まされるスケーター世界観の中で、横たわる老婆だけが良心のトリガーだと思った。
ボードがめりこんだ老婆を街中に横たわらせれば、スケーターたちは罪悪感で発狂するであろう。

*1:ガンダムネタだー! しかもファーストだー!! 約束された笑いだー!!!