トラスティベル 〜ショパンの夢〜

どんなゲームかっていうと、八歳の少年が道行くモンスターや友人の少年少女を「いいよいいよーかわいいよー」と小林由美子ボイスで囁いて盛り上げて激写ボーイして焼きあがった写真を道具屋の主人に売って生計をたてるという写真家ライフシュミレーターなのですが、ゲームの開発費高騰が叫ばれる昨今、売り上げを見込める要素を盛り込まずにはいられなかったと見えて、冒険、戦闘、物語というRPG的な要素も付随していました。自分にとって印象的だった部分は写真だったのだから、至って正直なゲームの要約と言えます。
RPGとして考えると、トラスティベルは、人形劇的なイベントシーンと簡易的アクション要素のある戦闘というPS2の国産RPGらしさを汲んでいる、いまのところ唯一の今世代ゲームだと思うので、存在していることに意義があります。と言えば聞こえはいいのですが、オリンピックでさえ参加することに意義があるなんてもはや誰も言いません。ゲームだって、おもしろくなきゃ生き残れない。トラスティベルは、生き残れなさそうです。アートワークも綺麗に作りこまれていて、戦闘も囲んで殴りまくって万単位のダメージと簡単操作で爽快感があり、ロードもそれと気づかないくらいに短い。しかしただひとつ、国産RPGの根幹ともいえるシナリオが甲斐名都していました。じゃなかった、壊滅していました。
 
甲斐名都は壊滅してないよ!
 
胡蝶の夢」「死の淵のショパン」「心の輝き」と、内省的にシナリオライティングされれば童話的グラフィックと相まっておもしろくなりそうな要素はてんこ盛りだったのに、ダメだったなあ。シナリオの根幹は説明不足、語ると思えばどいつもこいつも内省どころか葛藤さえせずに奇麗事を並べ立てていたもの。美しいなにかを伝えるなら、美しいと書くんじゃなくて、受け取り手が物や人のありさまから自発的に美しいなあと思う何かを書かなければならないんだと思うよ。
とにかく素人的っぽくていけなかった……。次トライクレッションドがRPGを作るなら社長が書くんじゃなくてちゃんとしたライターを雇ってください。というか、バテン・カイトスのように加藤正人氏でよかったのになあ。

トラスティベル ~ショパンの夢~ - Xbox360

トラスティベル ~ショパンの夢~ - Xbox360