ポルノ惑星のパラサイト生物

雑用係として惑星の調査に帯同している人の勃起が収まらないということで会議が開かれた。
「そんなことは個人的な病気でしょう。なんでこんなことで会議を開かなきゃならんのかね。地球に帰ったら入院でもさせてやればいい」
私はそっぽを向いてぶっきらぼうに言った。
「いえ、それがですね、昨日の調査で変な生物に寄生されたみたいでして、わたしどもは“サイタイヘビ”と呼んでいるのですが、湖一体に生息するへびのような生物の幼虫で、尿道から哺乳類のペニスに進入すると、激しい勃起と性欲を引き起こして射精するまで収まらないのです。膣外射精となればそれまでなのですが、膣内射精の際には子宮にまで入り込み、卵子に張り付き、受精と相成れば胎児のへその緒に寄生して育ち、出産時にはなんとへその緒を乗っ取り、へびのように這って去っていきます」
向かいに座っている人が言った。興味深い話だったが、500mlのペットボトルを股間に立てながら説明していたので、勃起の話をしているからわざと立てているのだろうかと思った。
「それはなんとも回りくどい生態ですな。おもしろい。今度詳しく話を聞かせていただきたいものです。……しかし問題の勃起はオナニーをすればそれで解決するように思えるのですが」
「ええ、私もオナニーを進めたのですが、彼は宗教的な理由でできないと言うんですよ。まあ私としては宗教で禁じられていてもオナニーくらいこっそりやってるだろうと思ってるんですが、今回の場合、勃起が収まったらオナニーが完全にばれますからねえ」
勃起が収まったら、のところでペットボトルを横に倒したので、やはりそうかと思った。
「しかしそうはいっても、今回は女性は来ていないではないですか。セックスを懇願することもできませんぞ」
私はいやな予感がしていた。
「そうですねえ。しかも彼は同性愛者なんですよ。サイタイヘビの性欲は強烈なのでこのままでは今夜にでも誰かが寝込みを襲われることになってしまいます。どうでしょう、誰か彼に尻を貸したいと立候補する方はおられませんか」
向かいに座っている人は、今まで一言も喋っていない八人くらいの人と私を見回したが、誰も何も言わなかった。
「と、すると、ジャンケンですね。強姦なんてことになったら大事ですから、穏便に、公平にいきましょう」
 
私はジャンケンに負け、尻を貸した。
翌日の朝、トイレからはわたしのうんこがへびのように這って出てきたのだった。

ポルノ惑星のサルモネラ人間―自選グロテスク傑作集 (新潮文庫)

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