帰り道

「真ちゃん! 楽しいね!」
「うん」
「真ちゃん! 歩いてるだけで楽しいね!」
「うん」
「真ちゃん! 横断歩道の白いところだけを歩くの楽しいね!」
「うん」
「真ちゃん! 横断歩道の白いところだけを歩き終わったね!」
「うん」
「真ちゃん! 横断歩道の白いところだけを歩くのが楽しいから、わたし白くないところは全部穴を掘ってしまえばいいと思うの!」
「う……あはは……それはよくないんじゃないかなあ」
「あ……真ちゃん……わたわたわたしおかしなこと言っちゃったかな? ごめんなさい! 嫌いにならないでごめんなさいわたし穴を掘るくらいしかできないからそれで少しでも楽しいこととかうれしいこととかできればいいなって話せればいいなって真ちゃんにもそう思ってほしいなって思っただけなのもうこんなこと言わないからごめんなさいもっとがんばって違う楽しいこととかしゃべるようにするからせめて嫌いにならないでくれたら……」
「そんなに気にしないでいいよ。それに穴掘りが好きなのがよくないんじゃなくて、道路を掘るのがよくないっていうだけだよ」
「真ちゃん! ありがとう! 真ちゃんは本当に優しいね! わたしこれからも穴を掘ったり穴を掘る話をしてもいいんだね! あ、もちろん道路は掘らないよ! えへへ! ……それと、あの、明日からもわたし真ちゃんといっしょに帰っていいのかな……。わたし全然楽しいこととか言えないし会話とかのやりとりもできないし穴を掘るしかできないし真ちゃんともだちいっぱいいるのにわたしとなんか楽しくないんじゃないかなってずっと思ってて……」
「ううん、そんなことないよ」
「そうなの! 真ちゃん! ありがとう! ずっと不安だったんだよ! あのねあのね、わたしはすごく楽しいんだよ! いっしょに歩いてるだけで楽しいしほかになんにもいらないくらいだよ! ずっと穴の中に埋まったまま生きて誰とも仲良くならないで一人で死んでいくんだって思ってたからともだちができてこうやっていっしょに帰ったりしてるだけで涙が出るくらい嬉ううううえっぐうううえーんひじゅるうううるうううううぶえへええええええええんぐふっほごっほげっほおっぐふうううううううううふうううううううううぎじゅるっ」
「わー雪歩そんなに豪快に泣かないで。ほらこのハンカチ使って。あとありがとう、ボクも毎日楽しいよ」
「ばごどじゃーん! ぶばばばばばあああああああああああん!」
 
よかった。