雪が積もってた

お茶をゆっくり飲んで暖まった。外。いつのまにか雪が積もってる。雪歩っていう名前だけど東京生まれ竪穴式住居育ちだから、雪の上を歩くのは苦手。三歩進んで二度転んでるうちに、日も昇ってきちゃった。ちょっと遅れて現場到着。真ちゃんの姿が見えた。どうしよう。声をかけないと。「ま」……あ、声が出てない。大きく息を吸ってもう一度。「ま、まことちゃーん」「あ、雪歩ー!」よかった気づいてくれた。わたしがよたよた歩いていると、雪煙を巻き上げて走ってきてくれる。うれしい。待たせちゃったかな。あやまらないと。それにしても真ちゃんは元気だなあ。いっしょにいるだけでわたしも楽しくなってくるなあ。そんなことを思っている間にもどんどん走って近づいてくる。「真ちゃん? そ、そろそろとまらないと……」言い終わる前に「わわー雪歩ー!」急に止まれない真ちゃんがズザーっとくの字になって踏ん張って滑ってくる。
「きゃー!」わたしは咄嗟に穴を掘った。すぼふ。真ちゃんを落としちゃった。下半身を穴に落とした真ちゃんは、つま先を支点にクルっと45度回転してくの字から┌の字になった。というか顔面を地面にたたきつけた。どす。衝撃でバッグの中身が散乱した。「わ〜! 真ちゃん大丈夫!? うぅ〜、ごめんなさい。急に止まれそうもなくてぶつかりそうだったからびっくりしちゃって……。わたしも隣に埋まるぅ〜」こんなことならぶつかっていっしょに転がればよかった……怒らせちゃった嫌われちゃったもう全部おしまいなんだ。
でも真ちゃんはすごいバイタリティがあってやさしかった! 「ボクは大丈夫だよ!」と即座に飛び上がってくれた。直立! 大好き! 「うぅ〜、よかったー。真ちゃん足が速いからびっくりしちゃって……本当にごめんね。あと今日は遅れちゃってごめんね雪が積もってて歩けなくって。あとあと、はいこれお財布も落としちゃってたよ」コートの雪を払う真ちゃんに渡す。「ありがとう。へへっ、ボクもびっくりしたよ! 落とし穴に落ちるなんて何年ぶりだろうなー!」「うぅ〜ごめんなさい〜」「怒ってないよー。それに全然待ってないし、止まれなかったボクも悪いし、雪歩は今日はもうあやまっちゃだめだよ!」「うん、気をつける……あ、穴に落ちてお金が地面に残るなんて真ちゃんロードランナーの敵みたいだね、真ちゃんの上もわたし歩けたかな!」あ、わたし変な話してる……。言ってから気づく。「あ、はは……上を歩かれたらこまるけど、雪歩はロードランナーみたいに穴を掘るのが早いねー! すごいよ!」「そうかな、えへへ……わたし、ロードランナーさんはすごく尊敬してて、うれしい、ディグダグさんとかホリススムさんみたいにどんどん掘るのもいいけどロードランナーさんみたいに素早く人一人分だけを掘る技術もすごく興味あってねでも765プロと関係がないみたいで接点もないからひとりで練習してて……」
なんでこんなおかしな話してるんだろう、仲良くするってなんなんだろう。そんな不安でいっぱいで口だけが動いていたけど、話していて楽しい気持ちはあるし、きっと真ちゃんもそうなんだって信じるしかない。

雪歩はファミソン8bitっていうCDでディグダグサウンドを使った歌をうたっていて、とても楽しい曲でした。真はニューラリーXの曲で、これも真の父がレーサーだっていうのとつながっていて、選曲からよくできてるCDだったなーと思います。