人類は衰退しました 二巻
期待に胸を膨らませて読んだ一巻は、妖精の世界とか妖精とのコミュニケーションとか作品世界の雰囲気がひたすら描写されて、大したことは何も起きない日常のおはなしだったので、感想も何もなかった。おもしろい出来事が起こってないのでおもしろいと思う取っ掛かりがなかった。でも評価の高さは感じていたので、ちょっと気になっておもしろがっている人の感想をいくつか見てみると、どうやら妖精さんという存在のかわいさやゆるさにハマればおもしろいらしいというのはわかった。わかったのはいいんだけど、キャラクターを好くかどうかというのは自分ではどうしようもないことでもあるし、まあ今回はご縁がなかったということで田中ロミオ先生の次回作にご期待……。とか思ってたんだけど、二巻は一転すごいことになってるなあ。一巻でハマってた人は、事態は急転するわコミュニケーションやらなんやらといった作品のテーマまで如実に現れるわ妖精はあんまり目立たないわのこの二巻を受け入られるのだろうかと他人事ながら心配してしまうくらいにはっきりとSFらしくなってきた。特に『じかんかつようじゅつ』の後半はおもしろい。『最果てのイマ』の前半三十時間のギャルゲーパートを越えた先に待っていた魅惑の後半SFパートもそうだったんだけど、現実が混濁した妖精世界や精神内奥に深海の如く広がる未知の世界といった異質な世界を舞台にしながら、コミュニケーションというテーマがまっこうから緻密に書かれていて実にセンスオブワンダー。そしてそんな作品を複数書く田中ロミオすごいと思い始めてきた。開始五分で寝て再開して三分で寝た『クロスチャンネル』も再開する気になってきたし、『加奈〜妹〜』だってライデンファイターズみたいにXbox移植からXbox360移植に転身して発売されたら買うよ、と作家買いの機運が完熟。
まあそんなわけで、一巻がおもしろかったって人は当然もう読んでるんだろうけど、一巻がおもしろくなかったってひとにもおすすめしたい一冊になっている。おれにはありがたかったけど、それはシリーズものとしてはどうなのかと思わないでもない。ハヤカワJコレクションあたりでいちど好き勝手に書いてみたらどうなのか。
- 作者: 田中ロミオ,山崎透
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2007/12/19
- メディア: 文庫
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