セカイ、蛮族、ぼく。など
伊藤計劃が亡くなった。その後公開されたセカイ、蛮族、ぼく。を読んだ。「蛮族」が主観的には「蛮族に生まれたので蛮族」だったという話で大変おもしろかった。疎外感や空虚さを感じ、蛮族に生まれたことを嫌悪しながらも、それでもやはり蛮族だからという理由で「さーて来週もバンゾク、バンゾクゥ〜」とばかりにレイプ、殺人、生肉喰らいの日々を送る主人公。レイプ、殺人、生肉喰らいを嫌悪しながらも、それでもやはり内面の葛藤なんて人に見せるのは蛮族じゃないから、人前では知性のかけらもなくただ蛮族として生きる主人公。他人に自意識は観測されないし、レイプや殺人といった大罪も蛮族の血に付随するだけの行為だし、何もかも等しく意味がないぜ! という感じで大変おもしろかった。これはぜひほかの著作も読んでみようと思い、ハーモニーを読み始めた*1。
まだ 1/4 くらいなので、全体の感想はおいおい抱くとするけど、ひとつ感じたことがある。それは、人の命がすべて公共のリソースで、誰もがお互いを敬う倫理にがんじがらめにされた世界が舞台なので、日本人がトァンとかミァハとかキアンとかいう素っ頓狂な名前*2であっても、いじめられなくて安心だよ! というメッセージだった。……計劃もいけると思います。スラーティバートファーストはアイデンティティがクライシスだと思います。
- 作者: 伊藤計劃
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/12
- メディア: 単行本
- 購入: 50人 クリック: 931回
- この商品を含むブログ (329件) を見る