息吹

現実と異なる世界での生活について緻密に書かれているのではじめのページからまずわくわくする。筋立てとしては、調度一時間かかるはずの詩の暗唱が、同時多発的に一時間以上かかってしまうという不可解な出来事があり、その原因を探っていくと……というもの。おもしろいSFを読んだ気分になるおもしろいSFなんだけど、さらに何がすごいと思ったかって、ハードSFのように突拍子も無いイメージを頭の中に作る小説なのに、そのために知識や経験が全然要らないってところ。空気がプシューって流れるってことだけ知ってればいいんだよ。

S-Fマガジン 2010年 01月号 [雑誌]

S-Fマガジン 2010年 01月号 [雑誌]

シュタインズ・ゲート

おもしろかった。埋もれるのがもったいなかったので、5pbはPC版を出せ! not5pbは買え! というメッセージ性にあふれた感想文を書きたいなあと思って、クリアした日(10月21日)から毎日欠かさず、明日感想を書こう、と決意していた。
おもしろいけど埋もれそうだ、と感じた人はことのほか多いらしくて、私が毎日のお祈りを繰り返して感想を書く日をインクリメントしている間にそこかしこで絶賛の嵐となり、気づけば楽しいノベルゲー遊び隊のひとびとには存在は知れわたるようになっていたよ……。
なのでメッセージの重要性は小さくなったものの、5pbはPC版を出せばいいのに……not5pbは買えばいいのに……という思いは変わらない。
以下感想。
世界を空間に、未来が収束しようとする力を重力にたとえると、宇宙を漂っているとヤバイ星の重力圏に入ってしまったので必死に抜け出したら第二第三のヤバイ星の存在が明らかになったのでもう重力平衡の点へと向かうしかないというような話です。重力平衡の点の場合、到達したところで不安定極まりないので、ちょっとでも位置がずれるとまたヤバイ星のどれかに引っ張られてしまうのですが、シュタインズ・ゲートにおける未来が収束しようとする力場は、平衡点に入ると瞬時に均一になるのがおもしろいです。その瞬間的に世界のありようが変わる点は、扉にたとえられてシュタインズ・ゲート運命石の扉)と呼ばれており、このゲームのタイトルにもなっています。世界が変わる瞬間というイメージは爆発的でとても綺麗です。
そもそも未来の収束という意味が良くわかりませんが、おそらく未来に提唱されるエントロピーとは無関係な世界定数とでもいうような値があり、それは無限の時間を経た後の世界の状態を表し、通常は世界のパラメータによって有限個の値のどれかに収束するのですが、あるただひと通りの世界条件下でのみ発散するのだと思います。そして世界の運行は世界定数によって記述されるために、シュタインズ・ゲート到達後の世界は至るところ微分不可能世界となる(エピローグを見ている限り不連続ではない)。といったような意味合いであり、直感的な何かではないと思います。表には顕れないし、生活レベルではおおむね決定論にしたがっているように世界は進みますが、ただ時間が跳躍できない。おそらく、世界定数からの相対距離で時間跳躍先の座標を決めているのでしょうが、世界定数が発散しているので座標系が取れないのだと思います。
以下、twitter に投稿した分から箇条書き。

  • 複数の解釈ができるのでそれほどネタバレではないと信じて シュタインズゲートドラえもんの最終回みたいになってきたー
  • あとソビエトロシアでもないのに世界の重ね合わせがエロゲーにたとえられていた
  • シュタインズゲートは 鈴羽が右腕のつかれそうな立ち絵なので 遊んでいる最中ずっと (このひとの右腕は大丈夫だろうか……) と心配だった http://bit.ly/f8nnj
  • ルカ子は「ボクのこと、覚えていてください……!」みたいなことを言っていたので 泣きながら ですよねーと思ったよ あゆさんからの記憶バトンタッチ(ポケモン用語)
  • ルカ子は師匠に命じられた妖刀五月雨の素振りを全然しないのがいい 内に秘めた怠惰と他人一般への無関心を感じられる
  • シュタインズゲートの主題歌はいとうかなこ5pb 社長 じゃなくて angela がぴったりかなーと思う
  • まゆしぃ(CV:花澤香菜)のしゃべり方がリコーダーみたいだ
  • あとシュタインズゲートはオープニングで宇宙から見た地球をバックにして白抜きで主要スタッフ名を表示するという 10 億円かけないと踏み出せないように思える行為に踏み出しているのもおもしろいです そういうレベルでおもしろくてかつ普通に(NG副詞だけどtwitterなので!)おもしろい
  • ルカ子かわいー

Steins;Gate (シュタインズ・ゲート) (数量限定版) - Xbox360

Steins;Gate (シュタインズ・ゲート) (数量限定版) - Xbox360

ベヨネッタ

すべてのシーンがクライマックス! とパッケージに書かれているだけあって、オープニングのあと初めて自由に操作した瞬間にカタルシスを得た。曲に合わせて踊るように手と足と銃を振り回すベヨネッタ超かっこいい! と。
ひととおり遊んだ今の感想としては、その最初の瞬間が一番楽しかったなーということになるんだけど、実績システムによってゲームは自分が思っていたよりもクリアされない(長く遊ばれない)ものだということが明らかになっているので、ベヨネッタは多くの人が「楽しいゲームだ」という感想のみを抱き得るゲームだとも思う。
最初が一番楽しかったということはつまり、クリアする快感、自分のスキルを向上させて難関を乗り越える達成感が乏しかったということだ。回復アイテムや無敵アイテムが大量に手に入るし、難度をあげても全然難しくならない(主観)ので、アクションゲームに対して想像するアーケードライクなトライアンドエラーが最後までほぼないまま、最高難度をクリアして、実績もコンプリートした。
簡単だった、ということになる。それは悪いことではないし、マスに向けて意図的にそう作ってあるのでもあろうから、おれにできるのはうんうんと寂しげに頷いてパッケージにディスクをしまうことのみなんだ。楽しいゲームであって、あるがままに楽しく感じられたのに、最後に寂しくなってしまった。オー、ホルドンミー。結婚したい、誰かと。
あと関係ないけど、カットシーンで3Dモデルを止めてネガみたいな枠にはめて喋らせる演出には、「限られた予算でできる限りリッチに見せる演出だね!」と思ってしまって、単なるプレイヤーでしかない視点を失わされてしまうので、棒立ちでダイアローグとかのほうが個人的にはよかった。

BAYONETTA (ベヨネッタ) (特典無し) - Xbox360

BAYONETTA (ベヨネッタ) (特典無し) - Xbox360

近況注意報

twitter で天井を見つめることについての発言を目にしたので

購入日以来ずっと iPhone の待ち受け画面が自分の家の天井なので見たいときに見られて便利ですよ
http://twitter.com/wtnb18/statuses/4705220671

と書いた。
それは twitter で散見される前から天井見つめを生活に組み込んでいたという自負だった。結果でも能力でもない、ひとつの思いつきにさえ自負を抱くほど私は落ちぶれていた。その天井画像は自負をあらわしていたが拡張子は gif ではなく jpg だった。劣化した自負を映し出した jpg は必然劣化しており、画像はブロックノイズにまみれていた。またある日、ネクロノミコンの内容を記述した txt ファイルの拡張子を jpg に変更するとそこに映し出されたのは自負.jpgと同じブロックノイズ混じりの天井だった。ブロックノイズの文字を並び替えるとノロイズブックになる。このノイズこそが呪いだった。この画像からブロックノイズを取り除き、拡張子を txt に変更すると、そこに記述されているのは旧約聖書だった。嘘だった。

孤独なアルファ

【操作方法】
クリックのみです。

【遊び方】
プレイすれば分かっていくようになっています。

【ジャンル】
ノンセーブRPG

と readme.txt に書かれているゲームで、それ以上の情報を得るという行為はもうゲームプレイのうち。
多少踏み込んで説明してしまうと、限られたリソースをいつ使うか見極めるゲームで、情報収集にも貴重なそのリソースを使う必要がある。貴重なリソースを情報に費やしてしまったら、そのプレイは前途多難となるわけだけど、そうやってノンセーブ RPG の貴重なリソースを費やしたからこそ、得られた情報に価値が生まれ、よく読むし、攻略メモをエクセル(っぽいでお馴染みの OpenOffice の Calc)に保存までするというものだ。攻略メモなんて自然に取ってるよ!! と思いながらなぜかガッツポーズをしてしまった。いつも避けているものに魅力が宿る瞬間は気持ちがいいよね。そしてさらにうれしいことに今度は夢でも幻覚でもないのだ。
 

バットマン アーカム・アサイラム

簡単操作でかっこいいアクションができるゲームらしいという情報しか知らなかった段階でなぜか購入した。簡単という言葉が情報に含まれていたためにさぞ簡単なのだろうと思っていたけど、遊んでみると、その簡単さはかっこよさに向けられていたのだと知らしめられた。ステルスが求められる場面で飛び出してしまっては、かっこよく乱舞しながらも結局は囲まれて銃殺される。筋肉こそ人一倍あるもののほぼ裸なので銃殺される。それは当然のことであり、別に難しいゲームではないので、結局いままでの文章は特に意味はない。
ちなみにほぼ裸だとはいっても、このゲームはバットマンの斜め上後ろ視点なので、普通に操作しているだけでは風になびく漆黒のマントしか見えない。たまに肉体を見たくなって左スティックを下に倒してこちらを向かせてしまうのもご愛嬌というものだ。
あと、部屋間の移動のときだったか、「now loading...」という表示が予想されるタイミングで「door opening...」と表示されたので、ロード時間皆無!! シームレス!! と思いながらなぜかガッツポーズをしてしまった。いつも避けているものに魅力が宿る瞬間は気持ちがいいよね。来年あたりからのバンダイナムコゲームスのゲームには「dot eating...」を予想したい(この感動すべき「door opening...」のスクリーンショットを下に貼りたかったんだけど、何度ドアを出入りしても再現できなかった。どうやら夢か幻覚だったようだ)。
もう少し一般性のある感想も書いておくと、開始直後のシーンがいきなり退屈でやる気を失いかけていたんだけど、中盤でそのシーンが反転して、バットマンとジョーカーは表裏一体だなあと自ずから感じさせられたので、ダークナイトがおもしろかったという感想とのシナジーが得られ、一転、好印象になった。
国内版もでるらしい(http://www.square-enix.co.jp/batmanarkhamasylum/)。
 

Batman: Arkham Asylum (輸入版:北米・アジア) - Xbox360

Batman: Arkham Asylum (輸入版:北米・アジア) - Xbox360

エンドレスエンドレスサマー

高校生クイズを観ていると自分のクイズについての記憶が紐解かれるよね。
僕の場合はこんなの。

「まだぬ」ピンポン!「はいどうぞ」「カトゆー家断絶」「正解! お早い回答でした。それでは問題文を最後まで聞いて見ましょう」「“まだ塗ってます”と TOP 画像の alt 属性に書かれているニュースサイトいえば?」「正解はカトゆー家断絶。お見事でした。いったいいつまで塗っているんでしょうか。さて、次の問題です」

という早押しクイズの一場面。当時の僕にとって、オタク向けニュースサイトの最大手であるカトゆーさんが毎日毎日「まだ塗」り続けていることこそが、自堕落で楽しい日々が永遠に続く証だったと、エンドレスエイトよりもビューティフルドリーマーよりもカトゆー家断絶こそが終わらない夏休みを体現していたと、そんな嘘記憶が思い起こされるよね。